JBL で Bach を...

JBL4343のマルチシステムの話題を中心に

ディレイと位相

 DCX2496では、Short delay(調整範囲:0から4000mm (11.64ms))とPhase(調整範囲:0から180°まで)が設定できるようになっている。

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Short delay , Phase

 Short delayを使って各ユニットごとに、聴取位置までの距離を音波が伝わる時間差を調整してきた。ではPhaseはどのように設定したらよいのだろうか。スピーカーはアンプから信号が入力されるとボイスコイルを通り電気機械変換されコーン紙を揺らし、機械音響変換されて音波になる。電気入力と音波出力の間に伝達関数が存在することになる。

 クロスオーバーの説明として低域フィルターと高域フィルターの出力を加算するとフラットな特性が得られます、というのがよくあるが、電気的に加算すればそうであっても、高域低域のスピーカーからの音波が合成されたときに特性がフラットかどうかはわからない。これはユニットごとの伝達関数が存在し、周波数に依存する音圧と位相を変化させているからだ。つまりクロスオーバーの設計で意図したスロープはユニットの持つスロープの影響を受けるし、位相もシフトするのでクロスオーバー周波数では、意図したようにはうまく音が繋がらない。よって必要に応じてシフトしてしまった位相を補償することが必要になる。

 実際の調整としては、ディレイも位相角も同じ次元を持ち、測定値としては区別がつかないのでどちらで調整すべきか迷うことになる。セオリーとしてはディレイをぴったり合わせてから位相を補償することになるが、どちらで調整しても同じ結果になるのではないかと疑問になる。実際にインパルス応答を見てみる。

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ディレイでは完全に平行移動になる。

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 Phaseでも同様にシフトされているが、頭では過渡応答が生じる。これはAll-pass filterを使っているためと思われる。

 また、Phaseでは分解能にも注意が必要だ。Phaseは0°から180°まで5°おきに調整でき、調整周波数はそのバンドの高域側のカットオフ周波数になる。例えば上の例ではfc=1.14kHzなので分解能の5°は12.2μsになる。fc=300Hzでは46μsと分解能は荒くなるがディレイの分解能は周波数では変わらない。

 

※後になってUCA202の極性反転が判明したため、波形は上下逆になっています。