JBL で Bach を...

JBL4343のマルチシステムの話題を中心に

位相(phase)と極性(polarity)

 歌手がマイクに向かって歌を吹き込み、音を調整し録音してCDを制作するとする。家庭ではそのCDをプレーヤーにかけてアンプを経てスピーカーから音が出てくるとする。このとき歌手が「ふっ」と発声した息がマイクのダイヤフラムを押し込む方向に動いたとすると、CDを聴いている家庭のスピーカーのコーン紙は「ふっ」と前に出てこなくてはならない。つまりマイクから末端のスピーカーに至るまでどの途中の機器でも極性反転がないことが決まりだ。金田式パワーアンプのように反転アンプを作るのはよいが、わかった上で使ってないと最終的にどこで反転しているか頭をひねることになる。

 アナログネットワークの世界では、いわゆる「逆相接続」がよくおこなわれる。フィルターを合成するとフィルターの次数によっては、クロスオーバー周波数で位相が180°シフトすることがある。これを補償するためにスピーカーのプラスとマイナスの端子を入れ替えて接続する。これを称して「逆相接続」と呼ぶことがある。しかし位相(phase)は回ったりシフトはするが、「接続」はしない。この場合、反転する(invert)のは極性(polarity)だ。「180°回転した位相を補償するために極性を反転して接続する」という意味だ。「逆相接続」という言葉は誤解を生みそうな呼び方だ。言うのなら、逆極性接続とかなら話はわかる。

 JBL4343についていえば、ミッドバスは逆相だとか、いやもともと赤と黒が入れ替わっているとか、いやそれも意図的に逆にしているのだとか、いろいろネットで話題になった。この頃の米国の品質レベルから考えてプラスとマイナスが入れ替わっているなど、まぁありうる話だ。この頃製造されたJBLの中を開けてみれば、当時の品質がいかにヒドイかわかるだろう。結局、自分でどちらが正しい極性かを見極めて使うのが正解である。

 極性(polarity)の判定によく使うのがのこぎり波だ。正弦波や三角波のような波形では正極性も逆極性も同じに見えるが、上りスロープののこぎり波が逆極性になると下りスロープになるのですぐに分かる。

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逆相か、逆極性か

 ネットワークの都合で例えばミッドバスを逆接続した場合、上の例では、歌手が「ふっ」と発音したときにミッドバスのコーン紙だけ引っ込む方向に動くのか?いや低域は帯域制限されているので関係ないはず?クロスオーバー周波数の周辺だけの正弦波だけ考慮しておけばいいのでは?のこぎり波の高調波成分は反転しても変わらないので聴感上関係ないはず?など実のところよくわからない。ただ、波形再現を目指すのなら、逆極性接続では難しいだろう、ということになる。下の絵はデジタルソースに入っている楽器の波形の一部だ。これを極性反転すると。。。

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楽器の波形を極性反転すると