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JBL4343のマルチシステムの話題を中心に

平均律

 言うまでもなくJ.S.Bachの作曲した旧約聖書とも称される傑作、平均律クラヴィーア曲集(Das Wohltemperierte Clavier)だが、ここでの平均律は音律で言うところの平均律(equal temperament)とは異なるとされている。Wohltemperierteは英語ではwell-temperedで、よく調整されたという意味だそうで、Bachが意図し、使用したであろう音律というのはより古典音律に近いものとされている。平均律クラヴィーア曲集は24のすべての調性での「前奏曲とフーガ」という組み合わせで構成されていて、均等(対称)な音律である平均律で演奏される前奏曲とフーガよりも、不均等な古典音律による演奏のほうが、調性の違いにより、より固有で個性的な響きが強調されるのではないだろうか。

 さて音律としての平均律の話であるが、基準となる周波数f0から半音にしてn番目の音の周波数は

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で表される。n=12番目は1オクターブ上になるので2f0で2倍の周波数になる。基準となる音の周波数からの相対的な音程は対数を用いて直感的に理解できる値:Centを導入する。

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fnがf0の1オクターブ上だとするとf12=2f0なのでC12は1200になる。同様に平均律での半音はn=1でC1=100、長3度(ド~ミ)はC4=400、5度(ド~ソ)はC7=700となり、平均律のすべての半音は100セントで均等になり、直感的な数値となる。

 ではピタゴラス音律ではセント値どうなるかというとピタゴラスの5度は3/2倍でハーモニクスがピッタリ合うので完全5度と呼び純正な響きとなるが、セント値は、

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ピタゴラス音律ではピタゴラスコンマ分のしわ寄せが問題だったがこのピタゴラスコンマをセント値で表すと

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平均律の考え方はある意味でこの余剰分であるピタゴラスコンマを12個の5度に均等に振り分けてしまおうというふうにも考えられる。

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これは平均律の5度(¢700)と完全5度(¢701.955)の差に等しくなっている。また周波数関係でも同じことで12等分することは12乗根を求め、その分公比を圧縮してやることになるので同じ結果になる。